ミュージカル・デパートの中で見た景色
先日、ミュージカル「デパート」を観た。
初めてだったので、まさかあんなに「中」にあるとは思わなかった。案内が見つからなくてインフォメーションで尋ねたら「6階です」と言われて、改めて見ると案内はあった。「宝飾・時計」「美術」の文字に並んで「三越劇場」と。えええ紛れすぎ!でもここを知ってる方には普通のことなのか…?
エレベータで6階まで上がって、画廊のような場所を抜けて入口が見えたとき、スカートでよかった、なんて思った。大ぶりなアクセサリーつけてもよかったかも。そんな場所に劇場はあった。
当日券もまだ受け付けていた。店内放送で「デパート」の案内が聞こえた。買物の途中で、足を止めて、ふと観てみようかしら、なんて人もいるのかもしれない。デパートの中の劇場、実際に足を踏み入れて、初めてその良さがわかった。
オリジナルミュージカル「デパート」は、老舗のスクエア・デパートの中の人間模様が、ちょっと情けない御曹司を軸に描かれる。御曹司の情けなさは半端なく、社長は社長でうまく教育できてるとはいえない。お固くて厳しいけど実は悩んでいるマネージャーのベテラン女性がいて、明るく頑張ってるけど空回りする若い社員がいて、俳優を目指しているバイトくんはデパートをちょっとばかにしていて、噂好きの案内係はなんだか憎めなくて魅力的、常連客の夫婦は何か訳ありで……いろんな人がクリスマス商戦をきっかけに「少し」変わる。
ありがちな話なのかな、と最初は正直思った。御曹司が頑張って、途中でちょっと嫌なこともあるけどさらに頑張って、クリスマスを大成功させて、社長に認められて、恋愛なんかもして……と。
でも、展開は思ったよりも劇的ではなかった。御曹司は頑張るしクリスマスは成功するけれど、若い社員のアイデアはそれほど斬新じゃないし、御曹司は先頭に立ってみんなを引っ張っていくわけじゃない。どうしようもないことも起きてしまうし、それぞれの思いが完全に通じ合うこともない。
でも、何かが少し変わる。
うん、やっぱり、ありがちな話だったな、と思った。でも、最初に感じた意味ではなく、もっといい意味で。
終わった後、放心状態になることはなかった(たまにそういう舞台がある)。普通に立ち上がって、この後何食べようかな、とか考えてた。
それでいいんだろうな。だってデパートの中、なんだから。
太田基裕さんは素晴らしかった。
彼はブログでとても細かく自分の気持ちを書いてくれる。どんな役作りをして、どんな気持ちで演じて、終わったあとどんな気持ちか。劇的なことが書かれていることは少ないけれど、はっとさせられることは多い。
2.5次元の舞台でも指の先までキャラクターになっている、と思う俳優さんの一人でもある。
ご自身も書かれていたけれど、まさに彼にぴったりの役だった。
これからも応援していきたいです。
スクエアデパートで買い物するなら何を買うだろう?と考えてみたけど、思いつかない。
福袋…うーん、自分で好きなもの探せるかな。探したいな。
追記
再演決まったんですね。それまでには、福袋に入れたいものを考えたい…
追記2
大丸の300周年広告、なんだかいいなあと思ったら、「デパート」を思い出したのでした。